耕さない畑の生命力に感動

 先日、千葉県銚子市にある自然食カフェで、お話ランチ会が開かれたので行ってきました。私たち夫婦に「小農から考える持続可能な暮らし」というテーマで有機農業の話をしてほしいとの依頼を受けたのです。この会を開いたのは、銚子市の隣町、東庄町(とうのしょうまち)の有機農家「さくま草生農園」の佐久間清和さん、知子さんご夫妻です。お二人とは私が就農したころからのお付き合いですが、同じ県内でもとても離れているため、なかなか会う機会がないので楽しみにしていました。

 東庄町はコカブを中心とした産地、銚子市はキャベツの産地ということで、どこも畑が耕されていて、農業に携わる人がたくさんいることが分かりました。南房総地域に目立つようになってきた、耕作放棄地に太陽光パネルが並ぶという風景はほとんど見られませんでした。千葉県が農業県であること、地域によって事情が違うことを実感しました。


自然農の野菜の生命力

 カフェでのランチの前に、さくま草生農園さんの畑を見学しました。清和さんは、私が有機農業の世界に入りたいと思うようになったきっかけの一つである『いのちを守る農場から』の著者である有機農家・金子美登さんの霜里農場で研修を受けた後、就農しました。そしてはじめから畑を耕さない「自然農」というやり方を実践されてきました。種を播いたり苗を植える場所の草を鍬で削り取るようにしてから植えるそうです。今回は、その畑の一つを見せていただきました。

 こちらでも、昨年9月の台風15号の被害があり、ニンジンはそのあとにまき直しをしたそうですが、草の中に育つニンジンは、引き抜くとしっかり太っていました。ブロッコリーも、強風により苗が回されてしまい、苗の一部は枯れてしまったそうですが、畑に残ったブロッコリーの葉の色と勢いに生命力を感じました。その他,白菜やチンゲンサイなども元気に育っていて、不耕起で無肥料だとは思えないような様子です。

 これを見て、わが家も畑の耕し方を考えたいと思いました。7年前にトラクターを導入してから耕し方が変わりました。それまでの耕運機とは明らかに違い、土を必要以上にかき混ぜているような気がしていたのです。きっと肥料をしっかりやるならば野菜は育つのでしょうが、わが家も無肥料で育てているので、雑草が生えにくい状態の畑だから野菜も育ちにくいのではないかと、これまでの経験から感じていたところだったのです。必要以上に土をかき混ぜると、せっかく団粒化した土の構造が壊され、有機物を分解してくれる小動物たちの住処を奪ってしまうことになるのではないか、そんなことを考えていました。今回、さくま草生農園さんの畑で生きいきとした野菜たちを見て、ますますそう思いました。さくま草生農園さんの畑は、耕土の深い水はけのよい台地の畑作地帯にありますが、わが家の場合は重粘土の水田転作畑がほとんどなので条件が違うのは確かなのですが、今回の見学をきっかけに、耕し方を見直していきたいと思いました。

 そしてもう一つ見習いたいと思ったことは、自家採種を大事にされているということです。種の保存専用の冷蔵庫も用意しているということでした。改めて、わが家はまだ自家採種への取り組みが不十分だと思いました。今年から重要テーマとして学んでいきたいと思います。

        草の中で元気に育つブロッコリー(中央)とニンジン(左)


農家とお話ランチ会

 さて、お話ランチ会が開かれたのは「月と和音」という名の小さなカフェで、さくま草生農園さんの野菜やお米も使われています。素材の味を大切にした見た目も美しい料理をいただいた後、私たちがお話をさせていただきました。参加されたのは、小さなお子様連れの方も含め十数名でした。これまで保育園などでお話しさせていただいてきたのは、農薬や遺伝子組み換え食品と子どもの健康など食べ物を取り巻く問題が中心でした。でも、今回いただいたテーマは「小農から考える持続可能な暮らし」ということで、わが家の田畑や暮らしについて一通り写真を交えてお話しした後、農業のこと、有機農業のこと、農家の暮らしと地域の環境との関わりなど、日ごろの暮らしの中で感じてきたことをお話ししました。このような話に興味をもって聞いていただけるのだろうかという心配をしていたのですが、うれしいことに、とても共感したという感想を皆様からいただきました。このような場で何かを感じていただき、それを身近な人に伝えていただければ、それはきっと人をつなげる力になることでしょう。人を動かす力になることでしょう。

 わが家が大事にしてきた「有機農業」は、人や生き物や環境と競争や敵対するのではなく、共存し支えあおうとすることに価値があるのだと私は思っています。だからこそ、今の社会に広まりつつある息苦しさから人を解放する力もあるのだと思っています。私たちの拙い話でも、そんな思いが伝わったとしたら、こんなにうれしいことはありません。


 この日は、発見と共感のある素敵な一日となりました。

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