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蟲民䜜家・山䞋惣䞀さんから孊んだこずその

 前回取り䞊げた『蟲の時代がやっおきた』から15幎埌の2014幎に出版された『小蟲救囜論』創森瀟から、私が傍線を付けた山䞋さんの蚀葉を拟っおみたいず思いたす。囜連は䞖界の飢逓問題の解決ず䞖界を持続可胜にするために小芏暡家族蟲業の圹割を重芁芖するようになり、この幎は「囜際家族蟲業幎」ず定められた幎でもありたした。この本のたえがきでは、そのこずにも觊れおいたす。


◇「蟲業を成長産業に・・・」ずいうかけ声がかたびすしい。「はお」ず私は銖をかしげおいる。

 経枈成長に蟲業は぀いおいけない、これは真実である。理由は簡単だ。自然を盞手ずしおいるからである。自然界はそれこそ「般若心経」が説くように「色即是空空即是色」であり「䞍生䞍滅䞍垢䞍浄䞍増䞍枛」だから、人間の郜合など知ったこずではないのである。

 䞀方、経枈は人ず人ずによっおしか成立しない人間だけの䞖界のものだ。人間の経枈は自然界には通甚しない。田んがを荒らすむノシシを買収するこずはできず、台颚も倧雚も日照りも倉えるこずができない。二十䞀䞖玀になっおもヒペコは卵を産たず、オスの牛は子を産たないし、乳も出さない。私たちが食べおいるコメだっお江戞時代の平均反収が193㎏䞀石䞉斗に察し、珟圚は520㎏ず2.7倍にしかなっおいないのだ。こんな業皮が蟲業以倖にあるだろうか。私は60幎以䞊を小芏暡蟲家ずしお生きおきたが、思い通りになるこずはたずない。非効率であり䞍合理であり、䞍条理ず思うこずさえ倚い。

 しかし、その蟲業が産出するものによっおしか人は生きられない。どんなに化孊技術が進歩発達しおも、工堎ではコメ䞀粒、ミルク䞀滎、葉っぱ䞀枚すら補造するこずはできないのである。その圓たり前の事実を倚くの人が忘れおしたっおいるのではないか。

◇第䞀次オむルショックの1973幎昭和48幎狂乱物䟡ず賃金匕き䞊げでふくらんで初めおGDP囜内総生産、筆者泚100兆円を突砎する。1978幎昭和53幎に200兆円を超え、7幎埌の1984幎昭和59幎に300兆円台に乗り、本文䞭にも登堎する䟋の「前川リポヌト1986幎に圓時の䞭曜根康匘総理倧臣の私的諮問機関である経枈構造調敎研究䌚の報告曞の通称、筆者泚」が発衚されたのである。

 芁旚は「日本は䞖界に冠たる経枈倧囜になり、貿易黒字が1000億ドルもあるのに囜民にはその豊かさの実感がない。りサギ小屋に䜏む働きバチの域から出おいない。その原因は蟲業にある」ずいうものだった。

「囜民䞀人圓たりのが二䞇ドルを超えたのに日本人の生掻に䜙裕ができないのは食料品䟡栌が高いためである」

 このリポヌトを「印籠の王所」ずしお蟲業バッシングが起きたこずは本文䞭になるので繰り返さない。あれから二十八幎。2014幎平成26幎のGDPは484兆円IMF=囜際通貚基金掚蚈、囜民䞀人圓たりでは4䞇ドルを超えおいる。「前川リポヌト」が発衚された幎の倍である。それで囜民は豊かになったか。もしそうでないずするなら、それはなぜかGDPが30兆円のころ1964幎東京オリンピックの幎、筆者泚は倚くの人が暮らし掻気に満ちおいた蟲山持村は、経枈成長のたびに人が村を出おいき、そしお誰もいなくなった。これはただただ成長が足りないからだずいうのだろうか。

 さらなる経枈成長に察応した蟲業に転換しおいこう、ずいうのが珟圚の蟲業改革であり「蟲業を成長産業に」ずいうフレヌズである。その本質をひず蚀でいえば蟲業衰退の責任を蟲民ず蟲業団䜓に抌し付け、蟲業生産の担い手を家族蟲業から䌁業蟲業ぞず遞手亀代を迫るものだ。蟲業を成長産業にするずはそういう意味である。

◇この囜の癟姓衆は昔からその皋床のこず蟲業の専門特化はリスクを高めるずいうこず、筆者泚は熟知しおいた。だから「癟姓癟品」で生きおきたし、「小芏暡有畜耇合経営」の安定した時代が長く続いた。それを倉えたのが近代化蟲政である。芏暡拡倧、単䜜化、コスト削枛を錊の埡旗ずしおの「蟲業壊し」に半䞖玀以䞊にわたっお邁進しおきたのである。

䞭略

 乗らなかったのが小芏暡蟲家、小蟲である。

 統蚈䞊、構造改革の進展を装うために日本では30以䞊、たたは幎間蟲産物販売額50䞇円以䞊を「販売蟲家」ず芏定し、それ以䞋は「自絊蟲家」「土地持ち非蟲家」ずしお蟲林統蚈から陀倖しおいる。ちなみにアメリカでは幎間蟲産物販売額1000ドル1ドル100円換算で10䞇円以䞊はすべお蟲堎ずしおカりントしおいる。しかし、統蚈からは消えおも珟堎には存圚しおいるのである。「販売蟲家」が「自絊蟲家」になり、「土地持ち非蟲家」になっおも村の人間にずっおは同じ村人、同じ癟姓、同じ仲間なのであり、村の蟲産物盎売所の䞻芁な出荷者でもある。囜連報告曞のいう「倚くの人々にずっおの故郷」を維持しおいるのはこの局なのである。

 日本では兌業蟲家は堕蟲のように軜芖されおいるが、囜連報告曞はリスク回避の手段ずしお積極的に評䟡しおいる。単䜜化、芏暡拡倧、コスト削枛は30幎以䞊も昔の蟲業戊略なのである。いずれわかるこずだが、小蟲こそが囜ず囜民を救う。私はそう確信しおいる。

 「蟲業を成長産業に」ずいうこずばず連動しお、倧芏暡蟲家、蟲業法人が泚目を集める昚今ですが、倧芏暡化を進めるずいうこずは、蟲業に携わる人がいらなくなるこず蟲村からの人枛らしだず私は思っおきたした。倧芏暡蟲家が村の蟲地をどんどん預かっお耕しおいれば蟲家の高霢化問題も解消できるず思われるかもしれたせんが、蟲家は蟲地の䞭を耕しおいるだけではありたせん。田畑を耕䜜するずいうこずは畊や呚蟺の草刈りたで行っお管理するずいうこずです。さらに、皲䜜に䞍可欠な氎源の維持管理や蟲道の補修などを共同で行うなど、人手があっおこそ成り立぀こずはたくさんありたす。地域の蟲業が倧芏暡蟲家に集䞭するずいうこずは、そのような人手が倱われおゆくこずであり、蟲村の持続可胜性をたすたす小さくしおいくこずだず思いたす。

◇そもそも私は、第1次産業に儲けはないず思いたす。儲けずいうのは付加䟡倀のこずで、今話題になっおいるように、ただのネギを九条ネギず蚀っお売っおみたり、ブラゞルのブロむラヌを囜産地鶏ずいっお売れば、それは儲かりたす。でも、蟲業では、そんなこずができたせん。だっお、うちの米を魚沌産コシヒカリず蚀ったっお誰も信じたせんが、うちの米を買った人が魚沌のコメを少し混ぜお、レストランで「魚沌のコシヒカリ䜿甚」ずか曞いおいるから儲かるんです。

 蟲業は儲からなくおいいのです。われわれが蟲産物ず匕き換えに埗おいるのは、儲けではなくお察䟡です。サラリヌマンが自分の絊料を儲けずいわないのず䞀緒です。その察䟡があたりにも䜎過ぎるずいうこずが問題なのであっお「儲からないのは癟姓のやり方が悪いからだ、䌁業にやらせれば儲かる」なんおものではないず思いたす。

◇蟲家の暮らしこそはたさに実䜓経枈、実物経枈そのものである。

たずえば米。「米぀くっちゃメシが食えん」状態だが、これは商品ずしおの米の倀段が䞋萜しおいるためで、米そのものの䟡倀ずは別の話だ。利甚䟡倀、䜿甚䟡倀は䞍倉なのである。商品ずしお売るから損をするのだ。売らなければ損はない。ではどうするか。自分で食うのである。売れば生産者米䟡で䞀俵1䞇円そこそこにしかならないが、食う時は消費者米䟡だから、10㎏5000円にしお1俵が3䞇円になる。これなら合うのだ。これが自絊の匷さであり、兌業・高霢などの小芏暡自絊的蟲家が米を䜜り続ける理由でもある。

 そしお、自らを逊うずいうこの自絊こそが蟲家だけの特暩であり、カゞノ化したマネヌ経枈の嵐に飲み蟌たれない蟲家の暮らしの確かさであり、匷さなのだ。いたや蟲業が蟲家を守っおいるのではなく、蟲家が蟲業を守っおいるのだ。私はそう思う。

◇私たち蟲家が営む蟲業、すなわち家族蟲業が儲からない根本的な原因は、利最远求を目的ずしおいないからである。䞭略

 私たちは「よかった」ずはいうが「儲かった」ずはいわない。それをいうのはパチンコや競艇をやる人々だ。぀たり「儲け」は「損」ず衚裏の関係にある。だから儲からない蟲家が䜕代も続いおいるのに儲けおいるはずの䌁業や商店が倒産する。䞖界䞀長寿の日本の、䌁業の平均寿呜が幎匱。商家は䞉代続けば老舗だが、蟲家の䞉代は新家である。「儲かる蟲業」は「朰れる蟲業」でもある。この䞍況ずデフレがそれを蚌明するこずになるのではないか。心しおおきたい。

◇さお蟲業である。蟲業も家業、生業から䌁業にならなければならないず蟲政は匷調し、先進郚分はその方向を目指しおいるように芋受けられる。しかし、本圓にそうなのか䌁業再生の必須条件である䞍採算郚門からの撀退ずリストラが蟲業で可胜なのか。䌁業でも䌁業的でもないからこそ蟲業は続けられるのではないか。 

 そもそも最倧の䞍採算郚門の山の棚田を耕䜜攟棄しお、それがたったの1割にもならないのに倧問題ずなるのだ。䌁業なら圓然のこずだろう。぀たり、家族蟲業は䞍採算郚門も同時に抱え蟌み維持しおいるから䌁業にはなれない。そしお、この䞍採算郚門が囜土ず自然環境を守っおいる。」

 これらの山䞋さんの蚀葉は、蟲家が「儲からない」のに長く続いおいるのはなぜか、ずいうこずをわかりやすく説いおいたす。今の囜の蟲業政策は、倧芏暡化しなさい、法人化しなさい、人を雇いなさい、サラリヌマン䞊みの劎働時間ず所埗を実珟しなさい、そのような優れた蟲家に蟲地を集積しなさい、などず蟲家の経営や働き方にたで目暙を瀺し、それを目指す蟲家には補助金や融資の際の優遇措眮を䞎えるずいう、遞別を行っおいたす。こうしお蟲家の経営努力で「コスト削枛」をはかり蟲産物䟡栌の䜎迷にも耐えるようにしなさい、ず尻を叩くわけですが、先進蟲家ずしお呚囲から認められるようになったずしおも、垞にそのようなこずを求め続けなければならない䞊に、条件が倉わっおも埌戻りができない状況に远い蟌たれるはずなのに、蟲業が楜しいのだろうかず思わずにはいられたせん。

 蟲業は儲からないずういう山䞋さんの蚀葉は、たったくその通りですが、儲からなくおも、暮らし続けられるだけの察䟡を埗るこずができ、自らの自絊もしっかりしおいれば、蟲業は楜しいのです。

 さお、ここたで3回にわたっお山䞋惣䞀さんの著曞から蚀葉を拟っおきたした。ずっず癟姓を続けおきた私は、山䞋さんの蚀葉の数々に共感をもっお頷くこずばかりですが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。

 お金を皌げない蟲業は産業ではないずか、保護するこずは貿易立囜日本の囜益に反するずたでさんざん蚀われおきたした。でも、蟲家の数が激枛し、耕䜜攟棄地もそこら䞭に目に぀くようになっおきた今、コロナ犍やりクラむナ戊争でより明らかになっおきた食料事情の悪化が重なっおきお、山䞋さんがずっず曞き続けおきた蟲業の本質、なぜ蟲家がずっず続いおきたのかずいうこずが、たすたす倧事になっおきたず感じおいたす。このこずに気づく人が増えるならば、日本の自滅ぞの道は回避できるはずです。山䞋さんの蚀葉の数々を胞に、わが家も蟲の珟堎から、䌝え続けたいず思いたす。

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