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有機農業は宗教?―農薬と子どもの健康について考える(その2)


前回は、ラウンドアップという除草剤の主成分であるグリホサートの人体への影響について、モンサント社の主張について書きました。今回は、それを疑問視するアメリカの母親たちの行動について書きます。

マムズ・アクロス・アメリカという運動

1996年に始まった遺伝子組み換え作物の商業栽培開始から20年余り。遺伝子組み換え作物の栽培が広がるアメリカではいま、遺伝子組み換え食品に反対する運動が盛り上がるとともに、有機農産物の需要も増えているそうです。それは、母親たちの自発的な行動から始まっています。市民団体「マムズ・アクロス・アメリカ Moms Across America」をつくったゼン・ハニーカットさんが、2017年に来日して講演しました。その報告が、パルシステム生協日本消費者連盟などのホームページで紹介されています。

彼女は3人の息子を持つ母親で、子どもの一人がアレルギー反応により生死をさまよった経験があり、またアメリカで毎年多くの子どもたちがアレルギーで亡くなっているという現実を知り、調査を始めました。そして、子どもたちの疾患の原因を調べ、世界中の科学者や医師や農家との出会いの中で、次のことがわかりました。すなわち、アメリカ人は世界で最も多くの遺伝子組み換え食品を消費していること、そして遺伝子組み換え作物とともに使われる農薬も摂取していることを。アメリカの加工食品の85%に何らかの遺伝子組み換え原料が使われているというのです。

 除草剤ラウンドアップは、ラウンドアップをかけても枯れないように遺伝子組み換えされた大豆、ナタネ、トウモロコシの畑に全面散布されます。そこでラウンドアップの主成分であるグリホサートが、尿や母乳の中にどのくらい残留しているかを調べてみると、食べものに気を付けている母親の母乳からは検出されなかったにもかかわらず、普通の食事をしている母親からは高い濃度で検出されました。そうすると、母乳を通して子どももグリホサートを摂取することになります。この調査で、遺伝子組み換え食品と共に農薬も取り込んでいることが実証されました。「マムズ・アクロス・アメリカ」には、遺伝子組み換え食品をやめたことで子どもの体調が良くなったという声が寄せられるようになりました。(下記のリンク国際環境NGOグリーンピースによる調査結果をご参照ください)

この結果から、遺伝子組み換え食品による健康被害は、遺伝子組み換えされた作物そのものが原因となる場合だけでなく、栽培中に使われる農薬が原因となる場合も多いということが考えられます。グリホサートの母乳への残留について日本モンサント社のホームページでは「動物やヒトの組織でのグリホサートの滞留は極めてわずかであることが研究で示されています。暴露が起きた場合でも、速やかに体内から排出されます」と説明していますが、アメリカの母親たちが行った調査結果を考えると、日本モンサント社の説明は信頼できません。

私は、ゼン・ハニーカットさんの話の中で、さらに驚くような事実を知りました。次回はそれについて書きます。

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グリーンピースが調査結果を公開(2016年12月8日)

この調査では、オーガニック食品を普段食べていない日本の2家族(大人3人、子ども4人)について調べました。はじめの5日間はオーガニック食品を含まない普段の食事をした後、10日間オーガニック食品だけを食べ続けた時に、その前後で尿中に含まれる主要な6系統の農薬と代謝物を分析するという方法でした。オーガニック食品に切り替えると、尿中のグリホサートの量も減ることがこの実験で確かめられました。


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