今年も稲の育苗が始まりました。わが家の育苗では、独自に用意した土を使います。その土の用意は、毎年2月ごろに行います。予め田んぼに刻んだワラと米ぬかをまいて耕しておき、よく乾いた時期に土を袋に詰めて運びだします。そしてこれを1年間寝かせておいて、ワラが十分に分解してから苗づくりに使います。
かつて手植えだった時代には、田んぼに苗代をつくり、そこに種籾を直に播いて苗を育てました。苗を育てるのは、田んぼの土の力でした。しかし機械植えに変わり、苗箱の土だけで苗を育てるようになったため、肥料を混合してある専用の育苗培土という土が一般に使われています。かつては混合してある肥料が化学肥料だったのが、今は有機肥料を混ぜたものも市販されています。それを使えば簡単なのですが、わが家ではいまだに育苗土を自分で作っています。今は田んぼの面積も増えて労力もかかりますが、循環ということを考えれば、この方が自然だと思っています。田んぼから取って寝かせておいた土は、そのままでは塊が粗くて使えないので、砕土機という機械にかけて細かくし、モミガラ燻炭を混合してから使います。
13年前にこのような方法を取ることにしたのは、手植えから機械植えに変更しても化学肥料の入った育苗培土を使いたくないので、どうしたらいいかと考えたからです。そして、かつて茨城県の研修施設にいた時にポット苗という苗箱と専用の田植え機を使っていたことを思い出しました。それが有機農家でよく使われていることを知ったのです。これを使えば、苗の根は途中から田んぼにつくった苗代の土の中に入るので、手植え時代の苗と同じく田んぼの土の力で苗を育てることができます。こうして、市販の育苗培土を使わずに田んぼの土で苗を作れる見通しが立ち、自家製の土を使った苗づくりをするようになりました。
その土を取る田んぼは、どこでもいいというわけにはいきません。なぜかというと、雑草が多く出る田んぼの土にはたくさんの雑草の種が混ざっているので、その土を使うと稲の苗と一緒に雑草の種も配ってしまうことになるからです。だから、雑草がほとんどでない田んぼの土を選んでいます。有機の田んぼは草だらけで大変だと思われることでしょうが、雑草がほとんどでない田んぼにすることも不可能ではないのです。