「子どもたちの給食を有機食材にする全国集会」にオンライン参加

 先日、「子どもたちの給食を有機食材にする全国集会」にオンライン参加しました。この集会は、「世田谷区の学校給食を有機無農薬食材にする会」を中心に企画されました。7時間におよぶ内容の濃い集会だったので、とてもまとめきれるものではありませんが、私が特に気になった方々のお話をまとめてみたいと思います。

韓国では無償の有機食材給食が当たり前に

 まず初めに、全国の学校給食を有機食材にする運動を中心になって進めている元農林水産大臣・山田正彦さんが、


◆韓国、台湾、ブラジル、フランス・・・子どもたちのためにオーガニック食材の学校給食を提供しようということは世界の流れになってきている。昨年韓国へ行ったが、各自治体が条例をつくって給食を無償化し、さらに高校までほとんどの学校で有機食材を使うようになってきている。韓国で有機農業が普及してきたのも、学校給食という販路があることが大きな役割を果たしている。一般価格よりも3割ほど高いそうだ。アレルギーの子どもは、500人の子どもがいるある学校では、そのうち7人くらいだそうだ(日本では40人くらいになっているが)。


と韓国の実情を紹介しました。

アメリカの食と子どもたちに起きていること

 『貧困大陸アメリカ』など多数の著書があるジャーナリストの堤未果さんは、「アメリカで起きていることは、日本でも必ず数年後に起きるから」と断ったうえで、いまアメリカで起きていることをわかりやすく紹介しました。

◆アメリカでも、小規模な家族農家がたくさんその土地に合った食べものをつくっていた。しかし、もっと効率よくということでどんどん大規模化していき、たくさんあった家族農家はほとんどなくなってしまった。例えば養鶏農場は、1950年代は98%が家族経営だったが、今はたった4社になった。養鶏農家は皆雇われ、マニュアルに従って鶏を飼っている。こうして食品業界はとても大きくなった。今や製薬業界、軍需産業と並んでアメリカ全体を支配している。

◆食品業界の一番の標的は子どもたちだ。味覚は子どものころに決まるからだ。子どもたちを狙うというのは、とても効率がいい。味覚がセットされれば、10代になっても、大人になっても、同じものが食べたくなる。味覚はそこまで影響力がある。食品業界は大口の顧客を探していて、給食に眼を付けた。アメリカで3千万人の子どもが給食を食べていて、しかも政府から助成金も出る。アメリカは、戦争にお金がかかるから、不況だからという理由で、教育予算をどんどん削っていった。そのため、特に公立の学校では給食の外注化が始まり、ファーストフードや加工食品業界が乗り込んできた。給食予算の削減で、どんどん加工食品・ファーストフードばかりの給食が増えていった。

◆アメリカでは、あらゆる食品に砂糖が入っている。牛乳も子どもたちが飲みやすいように甘くしている。だから牛乳を飲めば、子どもたちの腸内環境はどんどん悪くなる。味覚がおかしくなってくる。その結果、製薬会社の利益が増えた。子どもたちはどんどん太り、三人に一人はドクターストップがかかるほどの肥満になった。そして、大人しかかからないはずだった糖尿病が増えた。心臓病、精神疾患、アレルギー、消化器の疾患、虫歯。砂糖だらけの加工食品を毎日食べているから、虫歯になる。給食は味が濃く、中毒性がある。家庭の味がわからなくなる。腸内環境が悪くなるから、イライラし、精神的に不安定になる。いろんなアレルギーが出てくる。こうして腸内細菌がおかしくなって、製薬会社の利益がすごく増えた。子どもをターゲットにしたことで、薬も一生飲んでもらえる。製薬業界と食品業界の株主は一緒だ。

 堤さんは、アメリカの子どもたちの健康状態を具体的に話しました。虫歯がひどくなっても、アメリカの歯医者の治療費はものすごく高いから皆そのままにしているので、20代なのに入れ歯を入れることになる。歯が虫歯だらけだと、就職活動するときに困るし、その子の自尊感情も低くなる。こうしてその子の一生が給食から蝕まれていく。肥満の度合いもひどく、10代の子が、体重を支え切れなくて足に金属のギプスをはめているとか・・・。発達障害の異常な増加だけではない、子どもたちの健康問題の根深さを感じました。堤さんの話はまだ続きます。

◆アメリカには食品表示がほとんどないので、遺伝子組み換えかどうかもわからない。まだ食べもの、栄養がどんなふうに健康に影響を与えるか、病気の原因が食べものにあることをわかっていない医者はたくさんいる。子どもたちの腸内細菌との関係を考えていなかった。遺伝子組み換えのトウモロコシ、ダイスがアメリカ中に広がったときに、それとセットで販売されている除草剤がものすごくたくさんの健康被害を出しているのに、誰も文句を言えなかった。なぜなら食品業界が、多額の献金をして政治家を押さえていたり、マスコミも押さえているから。研究費をもらった学者たちも、テレビに出演し、「これは安全です」というと皆信じてしまう。だから、健康被害を受けたからと訴訟を起こしても勝てなかった。 しかし、「なんだかおかしい。子どもたちのアレルギーが多すぎる。問題行動が多すぎる。お母さんたちは、食べものに問題があるんじゃないかと思い始めた。

◆2019年8月、学校の用務員だった男性が、除草剤ラウンドアップを使ったために末期がんになったとして除草剤を開発したモンサント社を訴えた裁判で初めて勝訴した。普通の市民が、みんなで支えようとSNSで支援の輪を広げた。12人の陪審員たちが、「何かおかしいのかもしれない」という自分たちの直感を信じ、メーカーの責任を認める判断を下したからだ。この裁判の判決によって、責任を問われたメーカーの株価が急落した。するとマスコミが急に大きく取り上げるようになった。そして遺伝子組み換えトウモロコシのコーンフレークは危ないと、たくさんの親たちが買うのをやめた。すると、コーンフレークを売っているスーパーやコーンフレークの製造会社の株価も下がった。一方、裁判を新たに起こす人がとても増えた。

 このように状況は変わってきたため、アメリカの投資家たちは、まだ情報を持っていない消費者に売ることを考え、新たなターゲットを探そうとしている。それは、日本や、ブラジル、インドなどの国々の子どもたちの食べもの、給食だ。

◆世界ではあまりにもいろいろな病気にかかる人が増え、遺伝子組み換えや除草剤の健康への影響についての情報がインターネットで広がるようになったため、オーガニックの市場が拡大してきた。日本でもこれからどんどん増えていくだろう。でも気を付けなければいけないことは、オーガニックかどうかではない。大規模であるかどうか、農業ビジネスがやっているかどうかだ。アメリカでは、大手資本がオーガニックを扱うようになってきた。その一方、地域の小規模な有機農家が法律によって脇に追いやられている。有機認証をとるためにとてもたくさんの書類を提出しなければならない。お金も高額だ。だからどんどんつぶされている。そして、大企業がオーガニック市場に入ってくる。有機認証というのは、マーケティングの一部なのだ。

 だから、「小さくやること」が大切だ。絶対に大きくやらない。小さくやれば、つぶせない。小さくやれば、きめ細かくできる。小さくやれば、地域経済を守ることも、地域の農家を守ることもできる。共同体の文化も取り戻せる。食の選択は、価値観を変えることだ。だから、選び方を変えた瞬間に、世界はそれ以前よりも少し良くなっている。だから、未来を変えることでもある。

 堤さんの著書は数冊読んでいましたが、綿密な取材に基づく説得力のあるルポルタージュだと感じていました。実際に起きている様々な出来事をわかりやすくまとめてはじめて聞く人にも理解できるようなお話が腑に落ちました。

子どもたちへの農薬の深刻な影響を避けるためにも有機米給食を

千葉県いすみ市や木更津市などで学校給食に使う有機米の生産の技術指導をしてきたNPO法人民間稲作研究所の稲葉光國さんは、子どもたちの健康を考えるうえで学校給食に有機米を取り入れる意義を次のように指摘しました。

◆給食で使われている輸入小麦にグリホサートが残留していることが明らかになっているが、子どもはまだ血液脳関門(血液中から脳内への薬物の移行を制限する機能)が完成していないのでとても影響が大きい。そのことがまだあまり認識されていないのが問題だ。


◆さらにネオニコチノイド系農薬、フィプロニル農薬もこどもたちの尿検査で出てくる。この2つの農薬は、長期残留性が高く、細胞浸透性も優れた農薬で、お米に残留しているものを皆食べている。大人にはあまり影響はないものとされているが、子どもたちにはとても厳しい影響を与えている。それは発達障害の激増という形で表れている。現在は、子どもたちの7%に発達障害がみられるという状況だ。このまま放置したら、日本の未来はなくなるという危機的な状況にある。このことを認識する必要がある。ところが、マスコミが押さえられていて、伝えられていない。そのため、国産の農産物は安全だと思われているが、実はそうではない。

 環境保全型農産物の農薬はネオニコチノイド系農薬とフィプロニル農薬が使われているものだということをしっかり認識しておく必要がある。だから「環境保全型農業」では解決できない。農薬を使わない有機農業ということに踏み切らないと、未来を担う子どもたちの安全は保てない。その前提で、学校給食の有機化を進めるべきだ。その有機米を地域の農家が作り、地域の循環を保つことが大切だ。

 稲葉さんとは日本有機農業研究会の全国幹事会でご一緒したこともあり、地元で開催した有機農業の全国大会にもお招きしたことがあります。技術指導を積極的にされている根底には、子どもたちの健康状態と日本の稲作の現状に対するこのような危機感があることを知り、ますます稲葉さんのご指導が広がることを願いました。

有機野菜を使う学校給食調理の現場から

 武蔵野市の学校給食栄養士・高木完治さんは、長年給食の現場で取り組んできた経験を語りました。

◆昭和40年代から一部の調味料や乾物では安全なものを使っていたが、野菜やお米は量が必要なので難しかったが、昭和50年代になってやっと確保できるようになった。昭和50年代は行政改革で調理員が民間委託されるという話が持ち上がっていた。それに対して、どうしたら自分たちの身分を守れるのかを考えた。そして、日本一の給食を目指そうということで、食材だけではなく、食器の改善、食育などについても考えた。栄養士だけでなく、調理員も学校に行ったりした。そんな流れの中で、安心。安全な食材を導入することができたのだと思う。先輩の栄養士たちが、世田谷の大平博四さんのところでの勉強会で農家を紹介していただき、野菜も導入することになった。

◆価格面を考えると、どうして安心な食材を取り入れることができるのですかという質問をよくされる。市販の加工品を使わず、すべて原材料から作っていることも大きいだろう。また、有機野菜はロスが多いため価格が高くなるのだと思うが、私たちはあまり品質を問わないように、手間をかけて解決するように心がけている。そんなこともあり安価になるのではないか。もう一つ安価にできる理由は、取引が何十年というように長く続いていることだ。また年に1回、順番に生産者の圃場を訪ね、どの圃場のどれが給食用なのかを実際に見ている。

◆有機野菜というと、虫や泥がついていたりするので、調理員の協力なしには有機野菜は導入できない。調理員が働く喜びを持てる環境をつくり、手間をかけることへの理解と協力をしてもらえるようにしている。調理の現場を良く知っていて、調理員からできないと言われたときに、「いや、こうすればできるでしょう」と言える栄養士でなければいけない。それが調理員の協力を得るために大事だ。武蔵野市の学校給食を担っている財団では、調理員の経験者から栄養士を選んでいる。

 今は学校給食が民間事業者へ業務委託されたり、2008年に起きたいわゆる「事故米」事件で明らかになったように、既成の加工食品も多く使われるようになってきています。学校給食を利益を得るための企業の事業として行えば、経費の削減が当たり前になってしまうので、武蔵野市の事例とは正反対の方向へ進んでしまうことを、改めて感じました。

改めて考えたい子どもたちの食べものの質

 ゆめの森こども園園長・前島由美さんは、「フーズフォーチルドレン」という団体の代表も務めています。長年子どもたちと向き合ってきた経験から学んできたことを語りました。 「フーズフォーチルドレン」は、各都道府県に仲間がいて、全国にある2万5千の保育園の給食を有機にしようと動いているそうで、先ほどの堤未果さんも副代表を務めています。


◆保育士を25年務めた経験の中で、食べものでアトピーや喘息は改善することを実感していた。今は発達障害の子どもたちと向き合っている。いくつかの研修会に参加する中で、専門家の話から「脳内アレルギー」ということばを知り、また、国光美佳さんの『食べなきゃ、危険!』という本との出会いもあり、発達障害がなぜ起こるのかという理由が理解できた。

◆今の食べものは、ミネラルと酵素が不足している。これらが脳の神経伝達にとても関わっていて、満たされれば心が安定してくるものだ。そのような食べものを求めるという中で、科学的なものを遠ざけた選択をすることで、苦しんでいた子どもたちが楽になって、天性の才能を伸ばしてゆくという事例を見てきた。それらの経験をまとめた事例集を出版した。

 今は遺伝子組み換えや農薬、放射能などが健康に与える影響について特に関心が向けられがちですが、前島さんのお話では野菜などが本来持っているはずのミネラルや酵素が不足しているという問題に触れています。危ないものを避けるという視点だけでなく、人を健康にする食べものとは何かという視点も大切だということを改めて感じました。

有機農業が人々の健康のために広がるのか、それとも儲かるビジネスモデルとして広がるのか。

 日本農業新聞の報道によると、来年度予算について農水省が有機農業の推進のために1億5千万円の予算を概算要求することを決めたということです。学校給食への導入についてもその事業の対象となるようです。世界中でもオーガニック食品への需要の高まりとともに、国内でも有機農業が広がる条件ができつつありますが、ここで堤未果さんが注意を促しているように、「気を付けなければいけないことは、オーガニックかどうかではない。大規模であるかどうか、農業ビジネスがやっているかどうか」ということになるでしょう。これまで地道に取り組んできた有機農家ではなく有機農業ビジネスが栄えるようなことになれば、地域の有機農業と学校給食への取り組みを結び付けるという、人のいのちと暮らしを重視した方向とは違った経済原理で動く話にすり替えられてしまうからです。

 各地の有機農家は、これまで直接つながる消費者との交流である「提携」を支えに暮らしてきました。それは継続的であり、人間的であり、落ち着いて向き合える居心地の良い関係です。そのおかげで、わが家も福島原発事故や台風被害、コロナ禍などの問題を乗り越えてきました。だから安住していればなんとか暮らしていけると思います。でも、世の中が有機農業を求めるように変わりつつある今、私たち百姓も少しは地域内でのそのような動きに関わり、できる範囲で力を注いでいく必要があると強く思いました。


*この集会の模様も撮影されたドキュメンタリー映画『食の安全を守る人々』(監督:原村政樹)が、10月に完成する予定だそうです。遺伝子組み換え、除草剤グリホサートの被害、ゲノム編集、種子法廃止、ネオニコチノイド農薬汚染、学校給食の有機食材化など、世界と日本で起きていることを現地取材で追った映画だそうです。詳しくは「子ども達のために日本の食もオーガニックにする映画を制作したい「」というクラウドファンディングのプロジェクトページをご覧ください。

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