持続可能な未来へつなぐはざ掛け米

 やぎ農園がお米をお届けするまでには、たくさんの手をかけています。田んぼの土を使って苗を育てる、種もみの段階から農薬や肥料を使わない、雑草が出にくいように除草を工夫するということはもちろんですが、収穫や貯蔵方法にも特徴があります。

 「稲刈り」ということばは時代とともに変わってきました。現在では、大多数の農家がコンバインという機械で刈り取りと脱穀を同時に行うことを言います。そうして収穫した籾は、乾燥機に入れられ適度な水分率に調整され、すぐに籾摺りされて玄米になります。玄米だと常温では長期保存できないので、保冷庫の中で貯蔵されます。これが今一般に流通しているお米で、自然栽培・有機栽培農家のお米も多くはこのような方法で稲刈りと貯蔵を行っています。しかしやぎ農園では、このような現在主流の方法ではなく、次のように一昔前の方法で行っています。

 

刈り取りとはざ掛け

 最初に田んぼの四隅やひどく倒れてしまったところや、

が抜けきらなかったところの稲は鎌を使って手刈りし、わら

で束ねます。そのあとバインダーという自走する刈り取り機

を使って稲を刈り取っていきます。バインダーは、同じ大き

さの束をつくってくれます。

 こうしてできた稲の束は、竹を組んで作った「ならし」

呼ばれる干し場に掛けて、日光と風により時間をかけて自然

に乾燥させます。

 脱穀と貯蔵、籾摺り

 適度な水分率まで乾燥したら、脱穀作業に入ります。こ

にはハーベスタ―という自走式脱穀機を使います。脱穀

とれた籾は、袋詰めして倉庫に運びます。そして倉庫積み

上げて常温で貯蔵します。籾の状態で保存すると湿の変化

の影響や米つぶの表面の劣化が少なく、1年貯蔵に籾摺り

して食べてもおいしく食べられます。かつては掛けしてい

た農家は皆さん口をそろえて乾燥機を使ったの米よりもお

いしかったと言います。

 貯蔵しておいた籾は、毎月必要に応じて籾摺り・精米して

すぐにお届けしています。

 

わが家が「はざ掛け」にこだわる理由

①理に適っているから

 植物は子孫を残すために種子に養分を貯えようとします。

枯れてゆく経過の中で茎葉の養分が種子に移行していくよ

に、はざ掛けしてゆっくり干してゆく間にも茎葉の養分が種

子に移行していくようです。そのことが、乾燥機で仕上げた

お米との味の違いになるのではないかと考えています。

 

②消費するエネルギーが少なくて済むから

 大型化する農業機械を使えば、確かに作業の効率は抜群で

す。でも、その機械を製造するために使われるエネルギーと

動かすために必要なエネルギーを考えたらどうでしょうか。

当然、大きな機械ほど製造や作業をするのにたくさんのエネルギーを使います。でも、大型の機械を使っても、わが家のように人が歩きながら操作する小型の機械を使っても、同じ田んぼでとれるお米の量は変わりません。人間がそれを食べて得られるエネルギーの量は同じです。ですから、大きな機械を使うほどたくさんのエネルギーを使うのに得られる食べもののエネルギーは変わらないということになり、エネルギーの出入りを考えれば大きな機械を使う方が効率が悪いということになります。

 また、一般的な米の貯蔵方法は玄米の冷蔵です。こうすると、収穫の秋からずっと翌年の収穫期まで保冷庫で電気を使わなければ貯蔵できません。しかし、かつては当たり前だったように、籾で常温貯蔵していれば、1年分の電気が必要ありません。

  

③農村の風景をつくることができるから

かつては、どの農家も自給用の米はつくっていたもので、20

年ほど前までは当たり前だった秋のはざ掛けの風景。私たち農

家の仕事が農村の風景をつくりだしていて、その風景は訪れる

人たちに安らぎと感動を与えます。それは、私たち自身の楽し

みでもあります。

 

④地域資源の循環と田んぼがつながるから

 わが家がこだわっている「はざ掛け」は、単にお米の収穫方

法というだけではありません。南房総で主にはざ掛けに使われ

る材料が竹です。かつては様々な用途に使われていた竹も、今

では使う人が少なくなり放置竹林が問題になっています。でも、

使い道があれば竹林は資源の宝庫になります。わが家では、は

ざ掛けに使う竹を確保するために、放置竹林を整備しながら竹

材を確保しています。こうしてかつてのように、地域の里山と

わが家の田んぼがつながります。田んぼでとれた稲わらの半分

以上はその田んぼに返し、残りも畑の敷きわらや堆肥づくり、

野菜の貯蔵や、春の温床づくりなどに利用し、田んぼと畑もつ

ながっています。

 

​日本の農村からSDGsを考える

 最近は2015年に国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)

ということばが各方面で頻繁に使われるようになりました。何か

目新しいことのような響きですが、25年間有機農業の世界で過ごしてきたわが家では特別なこととは思わず、むしろこれまでやってきたことが世界から必要とされる時代になってきたのだと感じました。

 わが家の稲刈りは、たくさんの人たちとともに進めます。たくさんの人手を使うことを現代の言葉では「非効率的」だと言いますが、人手を極力使わないことは、膨大な化石燃料に頼ること、地球温暖化の原因をさらにつくりだすことです。つまり「効率的=化石燃料の大量消費」なのです。SDGsが叫ばれ持続可能性が注目される今、これはとても大事なことではないでしょうか。

 現在の稲作は機械や施設に多額の資金を必要とするにもかかわらず、米価はだんだん下がる傾向にあるので、新規就農する人が容易に取り組むことができなくなっています。一方、これまで稲作を担ってきた方々がこれから数年の間に全国で急減するのは間違いありません。このままでは、お米を十分に生産し、農村を維持できるだけの農家がいなくなる事態も起こると考えています。

 わが家のはざ掛けによる稲作は、新規就農者でも中古の機械を使って大きな負担をすることなく始められるので、自給も含め稲作に携わる人を増やせるものと考えています。これも持続可能な稲作を考える上で大切なことです。わが家では若い人たちに、地域の里山環境を守りながらお米を自分で作りたいと思えるような取り組みをして、未来へつなげていきたいと考えています。

 いま盛んにSDGsが叫ばれるのは、このままでは世界が持続できないからということでしょう。それでは、食料自給率が4割に満たない日本という国は持続可能でしょうか?私たちのいのちを支える食べものを、自分たちではつくれないとなったときに何が起きるのか、しっかり見つめる必要があると思います。わが家は、持続可能な稲作のあり方としてはざ掛け米にこだわっています。

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