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国連総会で「小農の権利宣言」採択 「家族農業の10年」始まる


みなさま今年もよろしくお願いいたします。今年初めてのブログは、国際社会において、農業に関する常識が変わり始めているというお話です。

2018年12月18日に国連総会で「小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言(小農の権利宣言)」が賛成多数で可決されました。一般の新聞では取り上げられていないと思いますが、12月19日付の日本農業新聞では1面と論説で取り上げています。

この宣言では、世界の農家の9割、食料生産の8割を占めている小規模・家族農業の価値を評価して、持続可能な社会にするための役割を明確にしました。そして「食料主権」「種子の権利」「農村女性の権利保護」「労働安全や健康の権利」などを守ることも明確に定めました。この宣言が採択された意義は大きく、すべての国連加盟国はこの宣言を遂行するための措置や行政支援、財源を確保する必要があります。

この宣言採択は、南米のボリビアが中心となって進められてきたものです。いま世界各地で多国籍企業による農地の大規模化や開発、開発援助という名での先進国による産地化などが起きています。例えばブラジルのアマゾン流域では熱帯雨林が伐採され、どんどん大豆畑に変えられているそうです。南米の大豆産地化には、日本の商社も現地法人を設立して関わっています。巨大な企業の活動は、現地の農民たちの暮らしの場を奪い農業労働者になることを余儀なくしたり、現地では誰も食べないものを栽培させたり、現地の人たちが食べるものは栽培できないために買わなければならない、といった矛盾を数多く生みだしています。そこに住む人たちの当たり前の暮らしを壊し、その暮らしとともにあった文化を壊し、自然環境を壊していく多国籍企業を野放しにしていては、地球規模の食糧問題や環境問題をますます深刻にしていくだけです。

だからこそ、国連は小規模家族農業の価値や役割について調査を進め、2014年を「家族農業年」として啓発を進めただけでなく、2019年からの10年間を「国連家族農業の10年」と定めて各国政府に家族農業を守るための具体的な施策をとるように働きを強めようとしています。今回の「小農宣言」採択により、このような世界の潮流がはっきり示されたと言えます。つまり、世界では、家族農業こそが持続可能な社会をつくるために大きな役割を果たすのだという認識が常識となってきているのです。

ところが、日本政府は今回の宣言採択に関して「棄権」しました。家族農業は発展途上国だけのものではありません。日本の農業を支えているのが、98%を占める家族農業なのは歴然とした事実です。それにもかかわらず大規模農家を増やすことや、海外の富裕層に向けた農産物の輸出産業化などということばかりを追い求め、世界の流れを無視していると、農村が培ってきた風土も文化も風景もいつの間にか失われていき、農地は単なる食料生産の場でしかなくなり、都市部に住む人たちにとっても心のよりどころとなるはずの大切な農村空間が消えてゆくことでしょう。「国連家族農業の10年」で世界にどのような動きが生まれるのか、私は注目したいと思います。

さて、私はこの1月に、日本小農学会の呼びかけ人でもある佐賀県の農民作家・山下惣一さんの話を聞く会に参加するため、福岡を訪ねます。山下惣一さんは、10代のころから農業一筋に生きてきた方です。その傍らで、農業の現場で起きていることや農業政策、世論を題材に、独特の視点で論じたたくさんの著作を残してきました。かつて「減反神社」という作品が直木賞候補になったこともり、鋭い筆致で知られています。私は、農村の現場で、日本政府の政策に対する反論となるような事実、つまり小規模家族農業こそが、食料も環境も国土も守っているという事実を積み上げていきたいと思っています。そのためのヒントを、各地からの参加者とともに考える機会にしたいと思います。「持続可能」であるかどうかが、これからの農業を考える上で一番大切なキーワードではないでしょうか。


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