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2018年を振り返って


今年は、日本の社会のあり方が大きく変わる転換点になるかもしれないと思うような出来事が次々に起きました。それらのうち農と食に関することについて振り返ってみます。

種子法廃止

一つは4月の「種子法(主要農作物種子法)」の廃止です。米、麦、大豆というおもな食料の種を都道府県が安価に安定して生産したり品種改良を行ったりする根拠となる法律が、国会でほとんど審議もされないままに廃止されました。これまでこれらの種は誰かのものではなくて公共の財産として扱われてきました。ところが種子法廃止とともに成立した「農業競争力強化支援法」では、公共の財産である種子の生産に関する知見を民間企業へ提供することを進めることが明記されました。今後、多国籍企業による日本の種子生産事業への参入はあるのか、もしあるとしたら遺伝子組み換え種子が作られたり、特許権を盾にした種子価格の高騰はないのか、など注意深く見守る必要があります。

外国人労働者の受け入れ拡大

さらに12月には、外国人労働者の受け入れを拡大するための「入管難民法」改正案が国会で成立し、来年の4月からたさくさんの外国人労働者が農業の現場にも入ってくることになりました。すでに2000年から始まった「技能実習制度」により実習生として働く海外の人たちはいたのですが、その労働環境について十分な議論もされないままに受入数を増やすことになったのです。政府は、技能実習を修了し帰国している人については、通算5年を上限に就労できる在留資格を得るための一定の技能や日本語能力の試験を免除することにしています。そのため農水省は、改正された入管難民法が施行される来年4月以降、速やかに受け入れが可能になるとの見通しを示しているそうです。

私は、この法改正が低賃金労働者として外国人を呼び込むためのものに他ならないと考えています。そうだとすれば、日本人の就農者の動向にも間違いなく影響が出てくることでしょう。何しろ農業分野ですでに技能実習を修了して帰国した人は6万8千人もいるということで、この数は2017年の新規就農者数5万5700人を上回っているのです(日本農業新聞12月20日1面トップ記事より)。これは次世代の人に農業を継承することよりも、いまいかにコストを下げて稼ぐか、いかに農産物価格を抑えるかということを優先するという、持続可能性を全く考えないあさましい政策だと思います。実際にどのような影響が出てくるのかを、注視していきたいと思います。

TPP発効

さらにマスコミでは大きく取り上げられていませんが、12月30日にいよいよTPP(環太平洋連携協定)が発効しました。参加国は、アメリカが脱退したためカナダ、オーストリア、メキシコ、ペルー、チリ、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナムそして日本の11か国です。すでに農林水産物の約53%で関税が撤廃されており、その他の品目では、段階的に関税を引き下げたり、無税の輸入枠を増やしていくことになります。TPP以上の譲歩を迫られる可能性があるアメリカとの2国間交渉も控えていて、今後日本の農業へどのような影響が出てくるのか心配なところです。

 このように、2018年は農と食について、日本という国のあり方が大きく変わるかもしれない出来事がいくつもありました。今後農業の現場で起きていることでわかったことを、少しずつお伝えしていきたいと考えています。今年もやぎ農園ブログをお読みいただきありがとうございました。


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