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ドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』から知る現在進行中の出来事


やぎ農園では、去る6月22日に地元でドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』の上映会を開催しました。この映画は2012年にアメリカで製作されたものです。遺伝子組み換え作物が広大な面積で栽培され、食品としてもたくさん流通しているのにもかかわらず表示義務がないため、米国人は知らず知らずのうちにたくさんの遺伝子組み換え食品を20年近くにわたって食べてきました。その結果何が起きているのかということを、この映画は追究していきます。日本で遺伝子組み換えの問題について関心が高まらなければ、きっとアメリカで起きていること多くの方にそれらの事実を知っていただきたいので、示されたたくさんの事実や証言の中から、人の健康と子どもたちの未来に関わると思われることについて拾い出してまとめてみます。

遺伝子組み換え食品とアレルギー、病気

アーデン・アンダーソン氏(医学博士)は、「組み換え遺伝子が体内に入ると免疫システムが反応し、自然界に存在しない異物だと認識し、炎症を伴って攻撃するのだ」と、遺伝子組み換え作物がヒトの身体に拒絶反応を引き起こし、それが炎症につながると指摘します。アシュリー・コフ氏(著名な栄養士)は、「アレルギー患者の食べものから遺伝子組み換え食品をすべて取り除くと、症状は改善される」と経験を語ります。

米国食品安全医薬品局(FDA)は1992年以来、「遺伝子組み換え作物(GМO)は自然界の食べものと違わない(実質的同等)であり安全性の研究は必要ない」と言ってきました。ところが、1998年のFDA訴訟の中で公開された機密文書によって隠された事実が発覚しました。スティーブン・M・ドラッガー弁護士(FDA訴訟発起人)は次のように証言しています。「実はFDAの科学者たちの多くは、とても安全ではない、アレルギー、新たな毒物や病気、栄養問題につながると判断していたのです」

リーキー・ガットと子どものアレルギー、自閉症

遺伝子組み換え作物のうち、害虫抵抗性を持つ作物にトウモロコシや綿があります。これらは毒素をつくりだす性質を持ったバチルス・チューリンゲンシス(BT)という土壌中に住む細菌を組み込んだものです。BTトウモロコシを食べた虫は腸に穴が開いて死にますが、2012年の研究で人の細胞にも小さな穴をあけることが分かったそうです。そうすると、人の腸から食物が未消化のまま漏れ出すことになります。このような状態をリーキー・ガット(もれやすい腸)といいます。マーサ・グラウト氏(アリゾナ先進医療センター医長)は「米国では、消化器疾患、アレルギー、自己免疫疾患、心臓病、腎臓病、糖尿病、甲状腺疾患などの慢性疾患が増えている。病気の多くは、腸の炎症に起因している。腸は食べものと身体の接点だから」と、腸の炎症が様々な病気を引き起こしていることを指摘しています。

 腸の炎症と子どもの健康についてミシェル・ぺロ氏(米国トップ小児科医師の一人といわれる)は、「リーキー・ガットの子どもが増えている。食べものが血流に流れ出し、食べものへの抗体反応が生まれ、食物過敏やアレルギーになるのです」と指摘しています。このような腸の問題と自閉症との関連も指摘されています。ドン・ヒューバー博士(パーデュー大学名誉教授)は、「遺伝子組み換え食品に対する豚のアレルギー反応実験で大腸内の異種タンパク質への生理学的反応は、自閉症の子供の胃で起こる炎症反応と似ていることが分かった」と証言しています。ある自閉症の息子を持つ父親は「5年前に自閉症の相談会で遺伝子組み換え作物について知り、即座に食生活を変えた。自閉児によくある腸の問題があったが、遺伝子組み換え食品を避け、有機食品を与えたことで症状が軽くなった」と語ります。

除草剤ラウンドアップの影響

多くの遺伝子組み換え作物は、除草剤ラウンドアップを散布しても枯れないように作られています。ラウンドアップが散布された畑ではどのようなことが起きるのでしょうか?ボブ・ストレイト氏(コンサルタント農業技師)は「ラウンドアップが散布された畑での作物の細胞組織を調べると、微量要素のマンガン、銅、亜鉛が欠乏している。採れる作物は栄養価が低く、それを食べる動物も栄養価が低くなる。それが食物連鎖で広がるのです」と証言します。またドン・ヒューバー博士(パーデュー大学名誉教授)は「植物の栄養価の低下は、動物の病気だけでなく、人間の病気も誘因していることが、はっきり実証されているのです」と言います。

また、除草剤ラウンドアップは生殖障害を引き起こしている可能性があります。ラウンドアップ耐性大豆を食べた実験動物に、深刻な生殖障害がありました。マウスの睾丸が変化し、精子細胞、子宮と卵巣にも異変があったそうです。

遺伝子組み換え食品と生殖異常

除草剤ラウンドアップだけでなく、遺伝子組み換え食品そのものが生殖異常を引き起こしている可能性があります。かつて不妊治療院が1つしかなかった地域に、今は平均14もあるとか、20年前は100マイル以内の地域に一つもなかった不妊治療院が今は50もある、という証言が出てきます。

 ミッシェル・ベロ氏(米国最高の小児科医の一人といわれている)は次のように言います。「妊娠を目指す2週間以上前から遺伝子組み換えでない食品が必要です。母親が遺伝子組み換え食品を避ければ、未来世代の遺伝子が変えられることもありません。遺伝子は簡単には変わらないと信じられてきましたが、遺伝子の変化は早く、しかも受け継がれるのです。」また、小児科アレルギー専門医のドリス・ラップ氏は、「親が遺伝子組み換え食品を食べると、子どもの成長に影響します。また一つ良くないものが羊水に入り込み、将来大惨事になります」と警告しています。

畜産業界で広がる繁殖異常

米国の家畜の間では繁殖障害や病気が蔓延しているそうです。どうもその原因が飼料にあるらしいのです。5000頭の牛を飼うある農家は「遺伝子組み換え飼料を長く与えるほど家畜のトラブルは増え、死んでしまう牛が増えます。初めの60~80日は大丈夫でしたが、その後は毎週1~2頭死にました。飼料を遺伝子組み換えでないものに変えると牛は落ち着き、肺炎も健康問題もぐっと減りました。」と語ります。また遺伝子組み換え飼料を与えるようになってから豚の病気の多さに悩まされ続けてきたある養豚業者の事例が紹介されます。飼料を遺伝子組み換えでないものに変えて11日後には豚たちの様子が劇的に改善されたそうです。

この映画の最後に、動物たちが本能的に遺伝子組み換え作物を避ける事例がいくつか紹介されます。それを知ると、与えられている遺伝子組み換え飼料は、本来食べたくないものなのに食べないと飢えてしまう状況に置かれた家畜たちの悲惨な状況が目に浮かびました。

 獣医や科学者たちが、流産した家畜の胎児の細胞を調べ、正体不明の生体を発見しました。それは非常に小さく、熱に強く、生殖障害をもたらすことが分かりました。そこで、ドン・ヒューバー博士(パーデュー大学名誉教授)はトム・ヴィルサック農務長官に進行しつつある状況の深刻さを警告するために次のような手紙を送りました。

「軍などの専門機関に40年以上勤めた科学者として、自然および人工の生物学的脅威の 評価を行ってきました。細菌戦や突発性流行病も研究しました。その経験から見ても、この病原菌の脅威は他に類を見ない危険なものです。緊急事態として扱われるべきです。」

しかし、農務長官はこれを無視しました。

この映画がつくられたのは2012年でした。その後、この謎の生体の正体は明らかになったのでしょうか?また、家畜たちの病気や繁殖異常は改善されているのでしょうか?現在の状況が気になります。

選ばないことで無くすことができる

この映画を観て、遺伝子組み換え食品は人間や動物たちの健康と生殖に大きな問題をもたらしてきている可能性が高いと強く感じました。確かに、急増する病気やアレルギーと遺伝子組み換え作物との関連は科学的に証明されていないかもしれません。しかし、証明されるほどの事態になった時、すでに手遅れで後戻りできない状況になる可能性があります。危険である可能性があるのであれば、まずはそれを避ける、つまり買わないことが必要だと思います。遺伝子組み換え作物やその加工品は買わないという選択をする人が増えていけば、経済原理で流通が減り、さらに原材料や飼料として栽培されている遺伝子組み換え作物の栽培面積も減るという好循環に変えることができます。                   

 最後に2人の方の言葉をご紹介します。

「もっと恐がるべきです。子どもだけでなくあなたも危ないです。なぜ多くの人が病んでいるのか。これ以上黙って許してはいけません。声を上げましょう。政治家に手紙を書きましょう。店で周囲に話しかけましょう。遺伝子組み換えでないと記載のない商品は買わないと言いましょう。」

(ドリス・ラップ氏:小児科アレルギー専門医師)

「昨日作られたものは変えられない。でも、今日買うものを選べば、明日を変えられます。」

(ニック・パスコ氏:ナチュラル・マーケット オーナー)

*なお、『遺伝子組み換えルーレット(日本語版)』のDVDは、アジア太平資料センターで購入することができます。ここにご紹介したのは、この映画のほんの一部なので、気になった方はDVDを購入してご覧になることをお勧めします。また、上映会を企画される場合には、そちらにご相談ください。


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