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農家にとっての味噌づくりと大豆のはなし


わが家の大豆畑8月末の様子。ちょうど花が咲き始めたころです。

この時期は、農家に限らず味噌づくりをする方が多い季節です。わが家でも2月に仕込みました。原材料はわが家で栽培した米、青大豆、黒大豆です。黒豆味噌は独特のうまみがあっておいしいのですが、仕込むのは久しぶりでした。

 先日千葉県東部の有機農業仲間と会う機会があり、大豆栽培についての話題になりました。彼は大豆をつくっているのですが、周囲の農家で大豆をつくっている人はいないということでした。それでは味噌作りはしないの?と聞くと、大豆はどこかから取り寄せて共同加工所を利用してつくっているということでした。その地域は露地野菜の産地として知られたところで、農家は野菜ばかりつくっているようです。その話に驚きました。

 わが家のある千葉県南房総地域では、わが家のように販売用の大豆までつくっている農家はあまり多くありませんが、味噌を仕込むための大豆をつくる農家は結構います。共同で使える加工所もいくつかあり、自家製の大豆と米を持ち込んで味噌を仕込みます。大豆栽培では、刈り取って乾燥させた後に、さやから豆を取り出す作業が大変なのですが、そのための性能のいい脱穀機を地元の農協が貸し出しているくらいに、当地ではまだ大豆をつくる農家はたくさんいます。

 わが家の味噌づくりは、ずっと昔に地元のベテラン農家のグループから教わったやり方にのっとっています。1単位あたり米15㎏、大豆15㎏と塩分を12%にするのに必要な量の塩を用意し、始めの2日間で米麹を作り、3日目に大豆を煮て、麹と混ぜ合わせ、つぶして、樽に詰める、というものです。この間の作業で麹と煮豆、塩を合わせて60㎏弱の味噌が出来上がります。この味噌をつくるための大豆を得るにはどれくらいの面積が必要かというと、わが家の経験からすると30坪=1畝あまり。ちょっとした畑のある農家なら、問題なく作れる面積です。

大豆はとても多様で地域性のあるもの

 農家が大豆をつくらなくなってしまったのは、販売するための作物としては、大豆の生産者価格がとても安いからということもあるでしょう。それでも、食べるための大豆として見た場合には、そのような取引価格とは違い、食べものとしての価値で見ることができると思います。一般の方にはあまり知られていないと思いますが、大豆はとても地域性の強い作物です。寒い地方、暖かい地方それぞれの土地に合った品種があり、それぞれの地域を見ても、農家によって代々種を取り続けている品種が違うものです。隣の館山市に千葉県の暖地園芸試験場があり、味噌や枝豆などに向く品種を見つけるために地域の農家から種を少しずつ分けてもらって試験栽培し、成分やその製品を比較するという研究をしています。そうして在来種の大豆を集めてみると、見た目は同じような青大豆や白大豆でも実は違うものだったりして、何十種類もあることがわかりました。今は、都道府県ごとに奨励品種として定められている大豆がありますが、もともと大豆はこのように多様な、そして地域性豊かなものだったのです。

わが家が特に大事にしているのは、地元の直売所で入手してから20年近く自家採種と選抜を続けてきた在来青大豆です。莢の付きも良く、枝豆として食べても風味豊かでおいしく、豆として食べても、煎り豆・きなこにしても、おいしいという自慢の品種です。わが家ではただ味噌を仕込むだけでなく、そのための大豆栽培も大事にして、無農薬大豆が欲しいという声にも応えていきたいと思います。昨年から始めた大豆トラストは、そのための呼びかけでもあります。


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