時代が変わっても残るもの


つい最近、東京新聞に掲載された2人の方の記事を読み、わが家の農業のあり方について改めて考えました。それぞれ農業とは全く違う分野の方なのですが、その根本にあるものはわが家とも共通しているのではないかと思ったからです。

 まず、8月24日付の特報面に載った「活版 後世に残したい」という記事から。

デジタル化の進展など時代の波に押され、消えつつある活版印刷を100年後も残したい―。長崎県五島列島の北端に位置する小値賀島(おぢかじま、小値賀町)唯一の印刷所で、こんな夢を抱く二十九歳の女性がいる。「晋弘舎活版印刷所」四代目の横山桃子さん。この夏、老舗印刷所で修業し、「活版がこれからもお客さんに必要とされる可能性を感じた」と手ごたえを語る。・・・・

デザイナーを志して県外の大学で学んでいるときに、家業の活版印刷が消えつつある技術だと知って、印刷所の後継者となることを決断。お父さんに反対されたものの、インターネットで全国から注文を受ける計画を示して説得し、従事するようになったとか。老舗印刷所での修行の後は、作業工程の見直しをすすめて、ますます意欲を高めているそうです。

 次に、八月二六日付の「考える広場」に載った、京都の老舗帆布かばんの一澤信三郎社長へのインタビュー記事から。

うちは京都で作り、基本的に京都でしか売りません。流通経費がいらない分、いい素材を使い、うちの独創性や専門性、特徴を生かした、いい仕事ができると思っている。下請けとか外国に委託すれば大量に作れるが、うちと同じものができるかといったらどうか。それぞれで利益を出さないといけないので、帆布の質を落としたり、作り方がいいかげんになるかもしれない。間に見えないところほど手間ひまをかけないといけない。それが、長く使っている間に違いが出てくるのです。(中略)

 安売り競争にはまったら自分の首を絞める。ものの値打ちと価格が合うのが大事だと思っている。値段だけ高くて何だこれってものではなく、量産ものの安っぽいものでもなく、希少性が高く金庫に入れていかなければならない芸術作品みたいなものでもない。

この二つの記事を読んで、わが家が「はざ掛け」による稲刈りにこだわっていることついても、なんだか似たような感じ方ではないかと思いました。周囲の農家が、コンバインでどんどん稲を刈り進め、ライスセンターへ持ち込んで乾燥すれば、翌日には出荷できるお米になるこの時代に、何ではざ掛けを続けようとするのかと、不思議に思われているかもしれません。しかし、昔から続けられてきたからこそ時代が変わっても続けられるものだと思うのです。機械での刈り取り・脱穀作業、乾燥、保存。どの段階においてもずっと省エネであるし、しかも天日乾燥の方がおいしいことは、栽培農家にとっては常識と言えるほど皆が言うのです。問題になるのは作業効率だけ。

 しかし、効率をよくするために高価な機械を買い、その支払いのためにさらに使用する面積を増やし、その結果さらに大型の機械を必要とし、その支払いのためにさらに使用する面積を増やし…。効率を良くしようとしても、その分ゆとりができて幸せになれる、というわけではありません。しっかりとした仕事をし、食べて美味しいと喜ばれる無農薬はざ掛け米にこだわり続け、その価値に見合った値段で買っていただけるような稲作を続けていく方が、わが家には合います。付加価値を高めるためにはざ掛けをしているのではなく、あくまで命を支える食べものとしてのお米の本来の価値を感じていただきたいと願いながらはざ掛けをしています。

これからの時代、無農薬はざ掛け天日干しのお米はどんどん貴重品になることでしょう。いまいろいろなことについて、「時代遅れ」と思われていたことが見直されつつあります。農業でもそんなことがあるかもしれないと思いながら、これからもわが家は、はざ掛けを続けていこうと思います。わが家に来てもらった研修生には、ぜひ栽培技術を自分のものにしてほしいです。


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