稲作と持続可能性

 わが家では、主食用のうるち米、もち米、そして古代米の一種である緑米を栽培しています。その面積は合わせて約180アールで、自家採種した種もみを播くことから始め、農薬と肥料を使わない、除草を楽にする工夫などいろいろこだわりがあるのですが、ここでは収穫以後のことについて書こうと思います。減農薬、自然栽培、有機栽培など栽培法を気にされる方は多いと思いますが、収穫や貯蔵法についてはあまり意識されていないのではないでしょうか。


 わが家の稲刈りは、まずバインダーという機械で刈り取り束ねる作業から始まります。これは、鎌で刈り取り稲わらで束ねていた手作業を機械に置き換えたものです。そして、地域に豊富にある竹を組んで「ならし」と呼ばれる干し場を田んぼに作ります。そこに刈り取った稲束をかけていき、気象条件によって5日~2週間、長い時は1か月、日光と風によって自然乾燥させます。これが「はざ掛け」あるいは「掛け干し」と呼ばれる当地で昔から行われてきた稲の乾燥方法です。その後、一定の水分率まで乾燥したころにハーベスターという機械を使って脱穀し、籾を袋詰めして運び出します。これを倉庫に常温で保管し、必要に応じてその籾を機械にかけて籾摺り・精米作業を経て食べられるお米にしていきます。

 20年ほど前は、当地でもごく当たり前に行われてきたのですが、近ごろはコンバインという機械で刈り取りと脱穀を一気に進め、すぐに乾燥機で乾燥させ、籾摺りをして玄米で貯蔵するという方法をとる農家がほとんどになってきました。玄米にした場合には、その保管は冷蔵庫ということになります。


 私が研修中に教わったこの「はざ掛け」にこだわって続けているのは、

① 地域の資源である竹を活かせるから

② 大型の機械を使わなくてもできるので掛かるお金も少なくて済むから

③ 電気や燃料を使わずに自然の力によって乾燥させることができ、貯蔵にも電気を必要としないので、省エネルギーで持続可能性が高いから

④ そしておいしいお米になるから

 です。


 3・11震災を機に、千葉県内の私の友人も、エネルギーのことを考えてコンバイン刈りからはざ掛けに切り替えました。昨年9月9日に房総半島を襲った台風15号では暴風による大きな被害が出てわが家も倉庫が被災しましたが、その後に長期の停電がありました。ちょうど稲刈りの時期でしたが、稲の乾燥施設が稼働できず、そのため稲刈りができない農家も多かったのです。そんな中、わが家は少しずつ稲刈りを進めていました。日本の農業をエネルギー消費や環境負荷、地域資源の活用という視点から考えることも大切ではないかと思うのです。国連でSDG's(持続可能な開発目標)が掲げられているように、「持続可能性」が今とても大事な問題になってきているのですから。

(写真左上)バインダーによる刈り取り (写真上中)はざ掛けとハーベスターによる脱穀

(写真右上)籾袋で常温貯蔵 (写真左下)籾摺り・精米作業 (写真中下)はざ掛けに使う竹を冬場に伐る (写真右下)はざ掛け米を応援していただく取り組み「はざ掛け米トラスト」


 この考え方に対しては、こんなに手間をかけていては、やれる面積も限られてしまうだろう。大規模化という世の流れに逆行したこのやり方で、今の高齢化した農村を守ることにつながるのか?農村の「持続可能性」はどう考えるのか?と疑問を持つ方もいるかもしれません。それについては、別の視点から改めて書こうと思います。 


 わが家では、おととしと昨年、台風被害で途方に暮れていた時に、思い切ってお手伝いしてくださる方を募集してみました。そうしたらたくさんの方々が来て、楽しくお手伝いしてくださったおかげで窮地を乗り切ることができました。秋のわが家の田んぼは、たくさんの人が作業をしていて活気づいていました。人の姿がたくさんあって、にぎやかな農村になったらいいなと改めて思いました。


 

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