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お金があれば食料は買えるという時代の終わり

 去る4月3日付時事通信社の記事によると、新型コロナウィルス危機に当局が適切に対応できなければ、世界的な食料不足が発生する恐れがあると、国連専門機関である国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO))、世界貿易機関(WTO)の3機関のトップが警告したそうです。「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」というのです。



 すでにロシアが小麦を、インドが米と小麦を輸出を制限するなど各国で規制が始まっています。また、封鎖や移動制限などによって農業労働者の確保や、食料の生産、加工、流通にかかわる労働者の安全確保が難しくなることによって食料品の市場への出荷ができなくなるような可能性があるというのです。もしもこのような事態が起きるとしたら、日本にはどのような影響があるのでしょうか。4月21日付『日本農業新聞』のコラム「今よみ」で、柴山桂太・京都大学大学院准教授が「医療危機、次は食糧危機」と題して次のような指摘をしています(一部抜粋)。

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 「政府は給付金を配ると言っている。確かに、1人10万円の給付があれば、資金繰りに困っている家計も一息つけるだろう。国家の福祉政策として、早急に実施すべきだと思う。

 しかし本当の問題はその先に待っている。企業倒産が相次ぎ、失業が発生する。貿易が止まっているので、食料供給も途絶する。そうなれば、今はおとなしく自粛要請に従っている人々も、不満を爆発させるだろう。

 特に食料危機は、以前から心ある識者が指摘し続けてきた問題だ。机上の経済理論を信じる者たちは、食料はいくらでも外国から買えるから心配無用とうそぶいてきた。本当にそうなるかどうか。近く歴史が審判を下すことになる。

 食料輸出国の中には、輸出を停止する国も出てきた。移民に労働力を依存する欧米諸国では、移動制限で、食料生産の大幅な落ち込みが予想され始めている。今年後半には、食料危機が世界的に発生することになってもおかしくない。

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 ロシアの輸出規制は、国内の備蓄量を増やすためだと言われていますし、世界最大の米輸出国になっているというインドの輸出規制は、国内の貧困層の人たちの食料を確保するためだそうです。これまでは「お金さえあれば、食べものはいくらでも輸入できる」などと言うこともできたのでしょうが、戦争や今回のような危機が来れば自国の食料を優先しようとするために、輸入国はお金があっても食料確保が難しくなることは予測すべきことです。

 食料危機は来て欲しくないことですが、もしもそのような事態が起きたら、1960年に統計を取り始めてから最低の食料自給率となっている日本は良くて食料品高騰、悪ければ食料不足でパニックということもあり得ます。実際に世界的な食糧危機が来た2008年、世界各地で食料配給所に大行列ができたり暴動も起きるという状況になりました(参照:農林水産省作成資料)。国連ではこれを機に持続可能な農業と食料のあり方への関心が高まり、2014年の「国際家族農業年」そして2019年~2028年の「国連家族農業の10年」が定められることになりました。日本では発展途上国の問題であるとして大きな関心は持たれませんでしたが、私は「これは未来の日本の姿かもしれない」と思ったものです。そんなことのないように願っています。

 しかし、そのような事態にならなかったとしても、ここで国内自給力を高めるための農業重視政策に転換し、農業に携わる人を増やすことをしなければ、遠くない将来、必ず日本は食料難に直面することになるでしょう。これは農業の現場で生きる私の確かな実感です。

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